膝関節とは

膝関節は、大腿骨、脛骨、膝蓋骨、腓骨で構成されています。
大腿骨、脛骨、膝蓋骨の表面は軟骨で覆われていて、この軟骨があることで膝関節は円滑に動くようになるほか、膝に体重が加わった際に衝撃を緩和させてくれる役割もあります。
また膝関節には同関節を安定させる靭帯が4本(外側側副靭帯、内側側副靭帯、前十字靭帯、後十字靭帯)、そして脛骨の内側と外側には半月板があるのですが、これは体重の負荷を分散させる役割などがあります。
このほか、膝の関節を曲げ伸ばしさせるための筋肉として、大腿四頭筋、大腿二頭筋、半腱様筋、半膜様筋、薄筋、縫工筋といったものが同関節を支えているわけですが、これらで起きた膝関節の異常につきましても当院にて診療していきます。

膝関節で起きる主な疾患

  • 変形性膝関節症
  • 膝靭帯損傷(前十字靭帯、後十字靭帯、内側側副靭帯、外側側副靭帯)
  • 半月板損傷
  • オズグッド・シュラッター病
  • 離断性骨軟骨炎
  • 骨壊死 など

主な膝関節の疾患

変形性膝関節症

40歳以上の方で膝の痛みを訴えている方は、日本では800万人以上いると推定され、その大半の方は変形性膝関節症を発症しているのではないかとも言われています。高齢女性に発症しやすいという特徴もあります。

そもそも変形性膝関節症とは、膝の関節にある軟骨が摩耗あるいは変性することが原因とされ、多くは加齢、肥満、あるいはケガといったことをきっかけに、軟骨がすり減っていき、やがて関節が変形していくのですが、それによって膝に様々な症状が起きるようになります。なお、膝に何らかの外傷を負った、関節リウマチなどの疾患が引き金となって発症することもあります。

主な症状ですが、初期では歩行時の痛みはないものの正座をしたくても痛みがあってできない、平地を歩くのは問題がなくても階段の昇降時に痛むといった症状が出るようになります。さらに関節が動かしにくくもなっていきます。またある程度症状が進むようになるとO脚が進む、平地の歩行時も膝が痛むなど、歩行そのものが困難となっていきます。このほか膝に炎症があると水が膝に溜まるようになります。これによって痛みが出るようなら抜くこともありますが、炎症が治まらなければ水は溜まるようになります。

日常生活に支障が出るほど膝に痛みがある場合は、かなり症状が悪化している可能性が高いので、一度ご受診されるようにしてください。

検査について

患者様に現れている症状や訴えなどから変形性膝関節症が疑われる場合、単純X線撮影によって軟骨のすり減り具合を確認します。さらに詳細を確認すると医師が判断すれば、MRI検査もしていきます。

治療について

治療は大きく、手術療法と手術療法以外に分けられます。
手術療法以外の治療(保存療法)としては、膝の負担を減らすための治療と変形性膝関節症による炎症や痛みを抑える治療があります。
前者の場合は、肥満の方はダイエットに努めるようにしますが、膝に強く痛みが出るような運動は避けます。ただ膝の痛みを和らげるための運動療法は必要で膝の筋力をつけることで軟骨は保護されるようになりますので、継続的に行うようにします。内容については医師と相談するようにしてください。
また後者(同疾患による痛みや炎症)の場合、鎮痛薬(NSAIDsなど)の服用や関節内にヒアルロン酸注射を行うなどして痛みなどを軽減させていきますが、いずれも一時的なものです。

上記の治療法だけでは効果が十分でない、痛みによる歩行障害が日常生活に支障をきたしているという場合に手術療法が行われます。
この場合、関節鏡視下手術(膝に痛みを引き起こしている尖った軟骨、増殖した滑膜を除去するなどしていく)、膝関節にかかる体重などの負担を軽減させるために骨を切っていく骨切り術(高位脛骨骨切り術)、膝関節の骨を人工膝関節に入れ替えていく人工膝関節置換術を行っていきます。

膝靭帯損傷

靭帯とは関節にある骨と骨をつなぐ軟部組織のことで、例えば膝の靭帯(前十字靭帯、後十字靭帯、内側側副靭帯、外側側副靭帯)に強い外力がかかってしまい、それによって膝の靭帯の一部あるいは全てが切れている状態が膝靭帯損傷です。
この場合、スポーツ外傷(なかでも接触プレーが多い競技)や交通事故で起きるケースが多いです。

損傷によってみられる症状ですが、前十字靭帯損傷(ジャンプ着地時に起きやすい)では、膝の疼痛、膝くずれ(膝に多大な負担をかける動作をすると膝が「ガクッ」とした状態になる)、関節腫脹、受傷時に「ブツッ」という断裂音が聞こえるようになります。
また半月板損傷が併発していることもあります。後十字靭帯損傷は交通外傷(ダッシュボード損傷)やスポーツ時に膝前面を打撲したという場合に起きやすいです。
前十字と比べると自覚症状や機能障害は重くないとされていますが、関節腫脹や痛み、膝の不安定感がみられるようになります。
内側側副靭帯損傷は、膝靭帯損傷の中で最も頻度が高いとされるもので、ラグビーなどの接触スポーツ、スキーなどの非接触スポーツのほか、交通事故や転倒などによって膝に加わった外反力によって起きると言われています。
膝の内側に腫れや疼痛、関節の可動域制限がみられるようになります。
外側側副靭帯損傷は発症そのものが稀とされていますが、膝に内反力が加わることで起きます。この場合も接触スポーツの最中や交通事故が原因で引き起こされます。
主な症状は膝外側の疼痛や腫れなどです。

検査について

問診、視診、触診のほか、徒手不安定検査(ラックマンテスト、前方引き出しテスト)やMRI検査を行うなどして総合的に判断していきます。

治療について

靭帯損傷を発生した直後は、まず現場にてRICE処置(安静、冷却、圧迫、拳上)を行っていきます。
これによって機能障害を防ぎ、早期回復の可能性を高くするようにしていきます。

治療の基本は保存療法となります。軽症の場合は膝靱帯にかかる負荷を低減させるべく、サポーター、テーピングなどで固定していきます。
安静期が過ぎたらリハビリテーションとして関節可動域訓練や筋力訓練を行います。

なお、膝十字靭帯の損傷で膝くずれを繰り返してしまっているなど、日常生活に支障をきたしている場合や高いレベルを要求されるスポーツ選手については、手術療法として靭帯再建術を行います。