股関節とは

股関節は人体の中では最大の関節と言われているもので、大腿骨の頭の部分(大腿骨頭)と臼蓋(寛骨臼)で構成されています。
骨盤側の臼蓋が大腿骨頭を包むような形になっている球関節でもあります。なお股関節は関節自体が安定するよう関節包に覆われています。
また大腿骨頭と臼蓋が擦れ合う部分は表面が軟骨で覆われているので、この軟骨が股関節にかかる力を吸収していくほか、これらの骨の動きを円滑にしていきます。

なお股関節は、立つ、歩くといった際にその体重を支えるといった働きがあるのですが、歩行時は体重の約3倍、立ち上がる場合は6倍程度、寝た状態からの立ち上がりは約10倍の負荷が同関節にはかかっているとされています。
そのため、何らかの原因によって、球関節の形が変性する、股関節の軟骨がすり減るなどしてしまうと、その負荷というのが分散しにくくなって様々な症状が現れるようになります。これが股関節疾患です。なかでもよく見受けられるのが変形性股関節症で、次に大腿骨頭壊死症が挙げられます。

また小児でも頻度は少なくなったとはいえ、先天性股関節脱臼をはじめ、ペルテス病、大腿骨頭すべり症、単純性股関節炎などの股関節疾患もみられます。
お子さんが足などの痛みを訴えている、歩行異常がみられるという場合も一度ご受診ください。

主な膝関節の疾患

変形性股関節症

何かしらの原因によって股関節の軟骨がすり減る、もしくは変形するなどして、股関節の骨が破壊あるいは変形してしまっている状態が変形股関節症です。
これによって股関節に痛みや可動域の制限の症状が見受けられるようになります。

原因としては大きく2つのことが考えられます。
ひとつは原因が特定できない一次性変形性股関節症ですが、現時点では加齢、肥満、重い荷物を持つなどの重労働による変性などが挙げられます。
もうひとつは二次性変形性股関節症で、これは他の病気が原因で引き起こされるもので、先天性股関節脱臼や臼蓋形成不全など小児期に発症した病気の後遺症、関節リウマチ、骨粗しょう症、関節炎といった疾患や外傷によって発症するケースです。

40~50代の女性患者様が多いのが特徴で、初期症状としては重い荷物を持つ、運動時などに股関節が痛むようになります。
そして股関節の可動域制限などがみられ、さら進行するようになると関節変形による左右の脚長差、跛行(足をひきずって歩く)などの症状も現れます。

検査について

変形性股関節症が疑われる場合、股関節の屈曲拘縮を調べるトーマステスト、股関節の病変をみるために同部位に疼痛を誘発させるパトリックテストをしていき、陽性と判断された場合は、股関節の単純X線撮影をしていき、画像診断を行っていきます。
さらに詳細な検査が必要と医師が判断すればCTやMRIによって診断をつけるようにします。

治療について

治療に関してですが、まずは股関節にみられる疼痛や症状を進行させないための保存療法を行っていきます。
具体的には、股関節にあまり負荷をかけないように減量をする、杖などの装具療法を用いるといったことや関節の安定性を改善させるべく股関節の筋力を鍛える運動療法(筋力増強訓練 など)のほか、疼痛がある場合は薬物療法として鎮痛薬(NSAIDs など)、ヒアルロン酸の関節注射を行っていきます。

上記の治療だけでは改善が困難という場合は、手術療法になります。
変形性股関節症の場合は、関節を温存させる骨切り術(寛骨臼回転骨切り術(RAO)など)になります。これは、50歳くらいまでの患者様に用いられます。
なお変形性股関節症の進行期や末期の高齢者の患者様には、関節温存術(骨切り術)は困難なので、人工股関節全置換術(THA)を行っていきます。

大腿骨頭壊死症

大腿骨の骨頭部分の血流が何らかの原因で低下、これによって骨頭部の骨が壊死し(阻血性壊死)、骨の変形や痛み、股関節の可動域制限がみられている状態が大腿骨頭壊死症です。30~40代の男性に発症しやすいとされています。

主な原因は2つあるとされ、明らかに阻血(血流が妨げられる)となる原因が判明している場合を症候性大腿骨頭壊死症(骨折などの外傷、放射線治療後、潜函病 など)、はっきり原因が特定できない場合は特発性大腿骨頭壊死症と診断されます。
なお、後者ではステロイドの投与、アルコールの多飲などがリスク因子ではないかと言われています。

よく見受けられる症状ですが、この場合は壊死の状態だけでは自覚症状は出ません。
この大腿骨頭の壊死部が圧潰するようになって症状がみられるようになります。
具体的には股関節痛(初期症状では重い荷物を持った際や運動時に股関節に痛みが出る)、股関節の可動域の制限などで、両側で発症することも珍しくありません。
このほか臀部の痛みや歩行困難などがみられることもあります。
それでもこれといった治療もせずに放置を続けると変形性股関節症に進行してしまうこともあります。

検査について

患者様の症状や訴えなどから大腿骨頭壊死症が疑われると診断をつけるための検査をしていきます。
多くは単純X線撮影によって、壊死部や圧潰状態を確認していきます。
また初期の場合は、X線撮影だけでは異常がみられないこともあるので、MRIで壊死部を確認していくということもあります。

治療について

治療の基本は保存療法です。
壊死の部分が少なく、関節面も変形がみられていない場合は、股関節の負担を減らすための減量、荷重がかかる仕事やスポーツを制限するほか、股関節の筋力を鍛えいく筋力増強訓練、装具療法で杖を使用することもしていきます。
股関節に痛みがあれば鎮痛薬(NSAIDs など)を用いるなどして経過観察になります。

なお同疾患は大腿骨頭の荷重部に壊死があると修復できなくなります。
そのため、股関節痛のコントロールができなければ手術療法となります。
手術には、荷重部に健常骨が当たるように骨切りをして位置をずらしていく内反骨切り術などの骨切り術や骨切り術が難しい場合に大腿骨頭骨頭を人工の材料にして置換していく人工骨頭置換術、もしくは寛骨臼も人工素材に置換していく人工股関節全置換術(THA)を行っていきます。